LARS RECORDS

腰を据えて音楽を

タイでの1ヶ月生活-レコ屋編-

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どうも。

梅雨なのに雨が降らない日が続きますね。走ることを日課としている人間からすると非常にありがたい。

題名にタイという言葉がある通り、5月から1ヶ月と少しの間タイに行ってました(途中の1週間はベトナムにいた)。1泊700円以下のドミトリーに寝泊まりして、1食150円くらいの屋台メシを食べるっていう所謂貧乏旅ですね。好きな時間に起きて、腹が減ったら何か食べに街を歩いて、昼間っからビールを飲んでタバコ吸って、雨が降ればいつまでもベッドでゴロゴロして、眠くなったら寝るっていう、本能剥き出しの生活を。

タイの旅行記なんてものは、ググれば幾らでも転がってるんで書きません。書いたところで安メシ紹介ブログに成り下がるのが関の山だし。文章でまとめるのは、タイでの音楽との出会い。長くなりそうだから、レコ屋編とライブ編に分けて書いてみます。

そもそもタイに興味を持ったキッカケは、LOSTAGE Bass&Throatの五味岳久(以下:五味兄貴)のblogとInstagram。というのも、LOSTAGEは今年の2月にタイはバンコクで行われたCat Expoという音楽フェスに出演したんですね。ちなみにこのフェス、5万人規模のタイ最大級の音楽フェスみたい。写真で見る限りステージも結構な広さだったし。一昨年にはthe band apartも出演した模様。

そのフェスでの様子を逐一インスタに上げるんですよ五味兄貴が。写真からでも伝わってくるそのはしゃぎっぷりが可愛らしかったし、1日ごとに綴られるblogも活力に満ちていたし、そこで紹介されてた共演バンドがどれも良くて、単純に良さそうな国だなーと。その時は仕事してたし、すぐに行くことは出来なかったけど、同時期にタイ旅行をした友人の後日談を聞いてこれは行くしかないやろって。もともと3月末で当時の会社を辞める予定だったんで、今しかないってことで半ば勢いで行ってきました。なので目的を挙げるとすればタイの音楽に現地で触れること。

 

入国して5日目に早速レコ屋へ。現地のレコ屋については一応事前に調べておいたんですが、情報が少ないってのは元より、タイ語ばかりでそもそも分からない。どんなジャンルを扱っているのか、メインはレコードなのかCDなのか、それすら定かでないまま、店名とGoogle Mapだけが頼りでした。

それが「bungkumhouse records」。タイの中心部から少し離れた所在地、最寄駅はタイ高架鉄道BTSのEkkamai(エッカマイ)駅から徒歩10分程度。細い路地にある雑居ビルの4階で、この店の存在を知らなければ見つけることは難しいだろうなと感じました。でも、大々的に看板を出して「ここだよ!」って主張してるレコ屋より、こういうひっそりと佇むレコ屋の方が好き。いい音楽を揃えてるイメージもある。例えば名古屋のSTIFF SLACK、雰囲気だけでなく品揃え的にも近しいものがあった。

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店内は結構狭め。ダブルベッド2台分くらい。10人客が入れば身動き取れなくなりそうだなって感じ。レコード9割、CD1割くらいのバランスで、総じてロックの比重高め。レコードに関しては特にインディー系が多い印象、とは言ってもビートルズからJAPANDROIDSの新作まで幅広く取り揃えている。CDについては、ほとんどがタイのバンド。CDをセロテープで壁に貼り付けてある辺りにタイらしさを感じざるを得ない。笑

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気になったのは、事前に把握していた店名「1979 vinyl and unknown pleasures 」(以下:1979)と現在の店名が違っていたこと。Google Map上にも、1枚目の店外のぼり旗にも、上記の名前が記載されてた。レジに立っていた男性店員に聞いてみると、このお店は3年前に友人と2人で始めたこと、「1979」は開店当時の名前だったこと、その友人が辞めてしまい、1人で続けていくタイミングで現在の名前に変えたことを教えてくれた。つまり彼が店長のMr.Gone(ゴーンさん)。

日本から来たこと、そしてタイのロックバンドを知りたい旨を伝えると快諾してくれて、たくさんの曲を聴かせてくれた。タイ音楽の傾向としては、ポップからメタルまで、歌モノからインストまでと幅広く鳴ってはいるものの、インディー系、とりわけポストロックとシューゲーイザーが多数を占めているように感じた。タイで有名な日本のバンドがMONOとtoeだと教えてくれたけど、まさしくこの結果に結びついてる。最近はthe fin.が人気とのこと。ちなみにタイで最もポピュラーな日本人ミュージシャンは山下達郎らしく、特に「FOR YOU」というアルバムが有名で、彼も欲しいのだそう。「次タイに来るときはレコードを持ってきてくれ!交換しよう!」とまで言われた。笑 好きな日本のバンドを聞かれ、LOSTAGEだと答えるが知らない様子。2月に来ていたのになぁ。笑 アジカンは知ってるって言ってた。流石に知名度高い。

お客さんがいないので質問しまくる。

タイにおけるCD・レコードの現状。価格については日本円で新品CD約1,000円、新品レコード約4,500円。レコードがやたら高い。ただこれには、タイ国内にレコードのプレス工場がないという理由がある。元データを米国に送り、米国内のプレス工場にてレコードを製造、そこからタイへ輸入、というプロセスを経ているため、価格が跳ね上がるらしい。逆にCDは国内に製造工場があるためかなり安価。アルバム1枚1,000円なら比較的手が届きやすい。ところがどっこい、タイ人はレコードは愚かCDすら買わないらしく、原因はやはりYoutubeにあるみたい。これは日本の現状と変わらなくて歯痒い気持ちになったし、ゴーンさんの表情も些か暗かった。結局この日は3時間も居座らせてもらったが、その間の来客は僅か3人。それもタイ人ではなく欧米人ばかり。おかげでたくさん話すことができたんだけど。

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このレコ屋を訪れて、異国の音楽に触れられたことは嬉しかったし大きな発見ではあったけど、何よりの喜びは母国語の異なる者同士でコミュニケーションが取れたことだった。もちろん、1ヶ月の旅の中で母国が違う人と会話をする機会はたくさんあった。旅の理由、仕事の話、家族のこと、恋人がいるかなんていう話までざっくばらんに。だけど、ゴーンさんと話した時間とその内容は、それらと比べられないほど大きく貴重なものだった。何故なら繋いでくれたものが音楽だったから。

これまで、レコードを買い、CDを買い、ライブに行き、ギター関連の機材を買い、スタジオに入りと、収入の多くを音楽に費やしてきた。Twitterは音楽の情報を仕入れる為にやってるようなものだし、暇さえあればレコ屋に足を運んでと、時間も音楽に注ぎ込んでいる。そんな生活をしていると、「自分は本当に音楽が好きなんだろうか?」「音楽が好きな自分が好きなんじゃないか?」、そんな疑問のような不安を抱く瞬間が何度となくあるわけ。だけどゴーンさんが、異国からの客人がしつこいくらいに質問しまくっても嫌な顔一つせずに、寧ろ嬉しそうに音楽を紹介してくれて、その曲たちを大きなスピーカーで聴いて、目が合うとお互い笑顔になってた。「音楽に国境は無い」なんていう言葉はクサいけど、良い音楽を共有しているその瞬間は、今いる場所が何処かなんて本当にどうでも良くて、ただその時間が堪らなく愛おしく素敵で涙が溢れそうになった。それまでの不安なんて吹き飛んでたな。音楽を好きでいてよかったって心から思った。

好みの音楽を伝えたくて「キーボードレス!」「シンセサイザーレス!」「タイトサウンド!」なんていう、咄嗟に出た陳腐極まりない言葉たちでも彼には伝わっていた。「好きなジャンルは?」っていう質問には「オルタナ!」「インディーロック!」、単語でも十分なんだ。ただ、「エモ(emo)」だけは何度言っても伝わらなかった。壁にOWENのCDが貼っ付けてあったから、思いっきり指差して「エモ!エモ!」って連発したら、「あ、イーモーね」って笑ってた。好きなジャンルの発音くらい覚えておくべきやな。

それから、ゴーンさんが勧めてくれた音楽がどれもセンス抜群。せっかくだから、その一部を紹介する。

 

 Yellow Fang / แค่เพียง(7inch vinyl)

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店に入って最初に手に取った一枚。ジャケットに惚れて聴かせてもらったけど、内容も素晴らしかった。タイ人ガールズスリーピースバンド。調べてみると、2012年、2013年と2年連続でサマソニに出演してる。ドリーミーな音に泣きメロがよく映えてる。ちなみにこの7inch Analogは、写真右下のステッカーにある通りこのお店のRECORD STORE DAY限定商品。いいタイミングに行ったなと思う。Youtubeにbungkumhouse recordsが音源をアップしてたし、Apple Musicでも聴けるから登録してる人は是非。英訳すると「Only」だそう。(by Google翻訳

 

PANDA RECORDS 16TH ANNIVERSARY COMPILATION

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タイのインディーズレーベル・PANDA RECORDSの16周年記念コンピ。このレーベルはかなりの名門らしく、お店にあったほとんどのタイバンドのCDがここから発売されていた。29曲も収録されているにも関わらず、日本円で約1,000円。これ儲けはあるんだろうか。その上レベルの高い楽曲ばかり、良い買い物。

 

Desktop Error / น้ำค้าง 

「Nam Khang」と読むらしい。これはすごい。「タイのマイブラ」とも称されている5人組シューゲイザーバンド。ただ、貼り付けたMVの楽曲が収録されているアルバムを聴いてみると、シューゲオンリーという訳ではなく、ポップ全開の歌モノから、タイの伝統音楽に寄せているであろう楽曲まで非常に幅広く、彼らの懐の広さが感じられる。タイ国内で相当な人気があるようで、バンコクのレコ屋とCDショップを5〜6店舗回ったが、どこも売り切れだった。ところがどっこい、ディスクユニオンのオンラインで購入可能!まさかと思い調べてみると、2013年に来日している…。しかも、東京・大阪・京都を回るツアーまで敢行していた…。アンテナは常に全開にしておかねば。ちなみに日本語に訳すと「露」。

 

The Eastbound Downers / Broken Hearts & Paper Cuts

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「俺が好きなのはキーボードレス!シンセサイザーレス!タイトサウンド!だ!」と喚き散らした後に聴かせてくれた僕の趣味どストライクな一枚。ゴーンさん凄すぎやろって震えたのを覚えてる。ハードコアっぽさを残しつつも、聴きやすくまとまっていて、一曲目で虜になってしまった。売り物じゃない彼の私物だったのに売ってくれた。嬉しいね。そしてこのCDとの出会いが次の「タイでの1ヶ月生活-ライブ編-」へと繋がっていく訳。

 

まとめると、bungkumhouse recordsは素晴らしいレコ屋でした。音楽愛に満ち溢れた店長・ゴーンさんに会うためだけでも行く価値があると思う。もちろん取り揃えられた音楽たちも素晴らしい。バンコクに行く機会があれば是非!以下に店の詳細を簡単に。

bungkumhouse records(旧店名:1979 vinyl and unknown pleasures)

住所:Google Mapへのリンクhttps://www.google.co.jp/maps/place/1979+vinyl+and+unknown+pleasures/@13.7301538,100.578487,17z/data=!3m1!4b1!4m5!3m4!1s0x30e29fac8466c28d:0x3e1f272d5be21226!8m2!3d13.7301486!4d100.5806757?hl=ja

営業時間:13:00~21:00 定休日:月曜日