LARS RECORDS

腰を据えて音楽を

何かをつくるということ

2019年のベストディスクを書かなければ、と思い続けて早4ヶ月が経ってしまった。

時間の流れとは恐ろしく早いものである。ぼやっとしていたらあっという間にジジイになってしまいそうだ。ジジイになることで得られるものもそれなりにあるだろうが、いまの感性で触れたいものがまだまだたくさんあるのだ。ゆったりと着実に歳を重ねたい。

 

最後の記事を書いてから1年以上が過ぎたが、生活に大きな変化はなく相変わらず現状に悶々とする日々の繰り返しである。種は少しずつ蒔いているが、果たして陽の目を見る日は来るのだろうか。

 

とは言え、ビートメイクという新しい趣味を始めて1年が経過した。そしてこれがとんでもなく面白い。偉大な音楽家たちに敬意を表しつつ中古レコードからサンプリングし、シーケンスを組み上げていく。そういう意味では自室で過ごす時間が増えたという変化はある。これはまあ、良くも悪くもあるだろう。

所謂大ネタなどは使わずに、ジャケットの雰囲気と年代を判断基準にしてレコードを選ぶ。誰も使ったことがなさそうなネタで首が振れるビートを作る。極端な話をすれば、この世にあるレコードの数だけビートが作れるのだから、奥の深さが尋常ではない。

一度始めるとトコトン突き詰めてしまう探究心と、一音一音の音の切れ目にまで拘る細かな性格が功を奏して、半日以上も平気でやってしまう始末である。

それから、元々なんでも1人でやりたい性分なため、純粋にビートメイクという行為に向いているのだとも思う。少なくとも17歳から10年続けたバンドよりも間違いなく相性がいい。何が起きるか分からない、人生とは面白いものだ。

 

さて、どうして1年以上も更新を絶っていた書き物に戻ってきたのかだが、先日友人に勧められた一本のライブ映像にひどく感銘を受けてしまったからである。

まずはこの映像を見て欲しい。


舐達麻 / FLOATIN' (Live Version) @新宿BLAZE 2019.12.19

 

舐達麻をご存知だろうか?

埼玉県熊谷をレペゼンするヒップホップクルーで、昨年リリースされた2ndアルバム「GODBREATH BUDDHACESS」がめちゃくちゃに良かった。

GREEN ASSASSIN DOLLAR、7SEEDSそれぞれがプロデュースした収録曲のビート全てが本当に素晴らしい。その柔らかくゆったりとしたビートに、メンバー3人がハードなリリックを乗せるのだが、そのバランスが抜群なのだ。

そしてこのライブ映像、冒頭でメンバーのBADSAIKUSHが語る言葉にモロに食らってしまった。

 

要約するとこんな感じだ。

自分の精神状態がどんな状況にあるが、それを何かに映し出す行為が芸術だと。

芸術という行為、つまり何かを表現するという行為を全ての人がやるべきだと。

それは「歌詞を書く」「小説を書く」「絵を描く」「映画を作る」はもちろんのこと、道路に絵を描くことだって芸術であり、誰でも金をかけずにできることだと。

何故それをやるべきか、それはネガティブな気持ちのまま誰かと接しても良いことなど無く、だからその負の感情を芸術に昇華して、それに真剣に向き合うこで自分が成長でき、その成長していくものが自分の自信に繋がり、それが誰かに評価されたとき最高な気分になれるのだと。

何一つとして反論の余地がない。

 

Twitterを始めとするSNSには匿名での誹謗中傷が溢れ返っている。

面と向かって物も言えない腰向けの連中たちが平気で人を傷つける。

突き刺した相手が命を絶って漸く自分が犯した行為の、その事の大きさに気付く。気付かない奴もいるだろう。馬鹿につける薬はないとは良く言ったものだ。

 

では何故そういった行動ができるのか。

それは、想像力の著しい欠如に依るものだと思う。

相手に対して思考を巡らせ、どんな言葉を使うべきか考え、選ぶ。

面識のない人を相手とする場合、ましてや言葉に温度を持たせられないSNSの場となれば、オフラインの世界で人と関わるときよりも、相手のことをたくさん考えなければいけないはずだ。

想像力を持ち合わせていないから、言葉の刃物を簡単に突き刺すことができる。

そしてこの想像力は、何かをつくること、即ち創造することによっても養わられるものだと俺は思うのだ。

何かをつくり出すとき、初めは必要なくても、創造することを続けていく中で、どこかのタイミングで必ず想像しなければならない瞬間が訪れる。

自分が創造するものを誰かに聴いて欲しい、誰かに読んで欲しい、誰かに見て欲しい、誰かに使って欲しい、そう感じたときに想像力無くして前には進めない。

だから俺は、何かをつくるという行為をみんながすべきだと思う。

誰かに苛立ったとしても、誰かを傷つけている時間などないはずだ。

創造に対して真剣に向き合えば向き合うほど、それが分かると思うのだ。

 

傷つけたり壊したりするより、つくる方がずっと困難で、だから尊い

何かをつくり出そう。

 


GEZAN「Absolutely Imagination」